9月後半、オレゴン州ポートランドに旅してきた。雨降りが多いからレインコート必須よと聞いてたのに、終わってみれば毎日日中は半袖になるほどからっと快晴、街歩きにはうってつけの天候で。ちょうど私が去った直後からしとしと雨が降り続けるポートランドの長い冬がはじまり、この時期を過ごしてこそいっぱしのポートランダーであって、だからこそこの街の人はよく本を読むのだそうだけど。

本と言えばダウンタウンのど真ん中にある世界最大の独立系書店「Powell’s Books of City」。聞きしにまさる規模感と品揃えで、古書を売りに来る人もひっきりなしに現れ持ち込む量もハンパない。この人気ブックストアでどんな本が売り出されてるのか、その見せ方売り方にじっくり浸れておもしろかった。翻訳を担当した「科学の実験大図鑑」シリーズの原書も置いてあったしね。

バカンス中とは言え朝は早く。というのもステイさせてもらった友人ファミリーの日課に乗っかり、まだ肌寒い早朝に家を出て子どもたちを車で30分かかる小学校の教室(!)まで送り届ける毎日だったから(深酒で起きれない日もあったけど…)。その小学校というのがおもしろく、公立ながら全教科を日本語と英語の半々で教える「イマージョン教育」をうたった全米でも数少ない学校。友人のように国際結婚カップルの子どもだけでなくアメリカ人同士の夫婦の子どももたくさん通っており(むしろこちらが主流)、国際語として日本語を習得させたいと考える人たちがこんなにもいるのかと知り驚いたし、えらく若いライアン・ゴスリング似の男前が校長先生だしでとても魅力的な環境。

このイマージョン教育を受けてる友人の子どもたち(9才の男の子と7才の女の子)の見事なバイリンガルぶりが今回の旅の最大の衝撃だったかも。通訳・翻訳者の端くれで生きてる私の英会話なんて全く足元にも及ばない流暢さで2つの言語を行き来し相手によって巧みに使い分けるんだから舌を巻く。負けじと英語で話しかけてみようもんなら「なんで英語? 日本語でいいよ」と一蹴され 笑。イマージョン教育、日本でもどんどんやるべきでは。

朝の日課を終えてからのモーニングコーヒーが至福だった。なんてったってポートランドはサンフランシスコに負けず劣らずコーヒーカルチャーを牽引してる街なのだから。とりわけインプレッシブだったのはCoava Coffee 1号店 『Coava on Grand』。期待を裏切らない空間と雰囲気と接客、店内で『KINFOLK』の撮影?!と思われるシーンにも出くわしたりね。

モーニングコーヒー後はダウンタウンを練り歩き、大きな樹々が生い茂る街並みを堪能しつつ、個人的ミッションにしていたこの街のホームレス事情リサーチも。いやほんと、ホームレスの人の数は想像以上で、日本ではホームレスの人=おじさんのイメージが強いけど、この街には女性も子どももカップルも、路上生活せざるを得ない人たちをたくさん目にした。ホームレス支援の現場に足を運んでみたら日本からジャーナリストが来たわよと次々に人を紹介してくれ取材もどきのこともできたので、このあたりは別途記事化するつもり。

友人のご主人が超のつくアクティブ系ってのに助けられ週末はオレゴンネイチャーを大満喫。彩り豊かなファーマーズマーケット、ワイナリーでブティックワイン飲み比べ、自前のATVで藪の中を走り抜け、米軍による超人的飛行ショー、夕暮れ時のダウンタウン河沿いを自転車で駆け抜けたりと初体験づくし。

2年ぶりのアメリカだったけど、今回もあらゆるもののデカさに何度嘆息したことか。コーヒーのスモールを頼めば日本のラージが出てくる、サーブされる料理も車も家も家具も食器も食洗も往き交う人々の体つきも…在米15年になる友人にはすっかり当たり前な光景にもいちいち反応してしまう。

何はともあれ友人ファミリーのすばらしいホスピタリティにおんぶにだっこでホテル滞在ではありえない温かな旅となりポートランドがぐっと身近に感じられる今。彼女の帰国タイミングで数年ごとに会ってはいたものの、お互いに身辺の変化激しかったこの15年。幾晩も深酒しながら語らいあえ、今やここが彼女のホームなんだなと、会いに来れてよかった。

さて、チャージ完了したところで10月。気の張る通訳仕事もちょこちょこいただけてるし、翻訳にライティングに、ギターも来年春に初の演奏会をすることになったので早々にプログラム決めてがっつり練習に励みたいところ。旅を終えたあとの日常にもワクワクできるのはありがたい。期待以上に優秀だったSONYα7 II でたくさん撮ったストリート写真は近々 STORY にあげるつもりです。